ADHD(発達障害)という言葉が数多くのメディアで取り上げられるようになり、一般的な認知度も高まってきた近年、心当たりのある就活生も多いのではないだろうか。それもそのはず、発達障害は10人に1人は存在するとも言われており、決して他人事ではない。

ちょっと人と違っていて友達の間でも浮いていたり、何かに異常なこだわりを見せて引かれやすいといった特徴などがよく挙げられるが、これは人として特に珍しいことではない。クラスに一人はこういう奴は必ずいたであろうし、普通に生活を送る上でこんな人間はゴロゴロいる。

つまり何が言いたいかと言うと、発達障害即ちアウトというわけでは決して無く、重く受け止める必要は一切ないということだ。そのことを勝手にマイナスに捉えてしまうことの弊害の方がよっぽど恐ろしいので、この点には注意されたい。

就職を進めるにあたって、発達障害を自覚しているということはその時点で大きな強みといえるだろう。発達障害特有のマイナス要素は、心がけによって緩和することは可能で、むしろ克服して強みに変えていくこともできる。

一番最悪なのは、自覚がないまま定型者と同じような就活スタイルを身に着け、全く同じ土俵にも立てないままもがき続けることだ。徹底的な自己分析により、自分の苦手なこと、不可能なことなどを一度確実に洗い出しておいた方がいいだろう。

この時点で、勝ち目のない勝負は切り捨てていくことだ。自己を顧みることで数少ない強みも見えてくるだろう。その点に絞って自己PRを組み立てていくとに全力を注いだ方がいい。何でもそれなりにこなすというのも大事だが、突出した部分でそれを上回るという戦略も重要だ。

業界研究は特に本腰を入れて取り組むべきだ。発達障害にとって、致命的に向いていない業界・職種というのは存在し、そんな所に身を放り込んでしまっては、グループワークや面接で全く歯が立たないどころか、一気に自信を失ってしまい、今後の就職活動にも影響を及ぼしかねないので気をつけよう。

逆に、発達障害が向いている業界・職種というのも存在する。一般的にコミュニケーションを要する仕事が苦手と言われているが、あまりそれらの作業を必要としない、機械的・規則的な作業などは定型者よりも秀でているともいわれている。

今やインターネットで現場の本音など、様々な情報収集が可能な時代なので、これを有効活用しない手はないだろう。発達障害に苦しむ会社員の声などを参考にし、どういった業界・職種がふさわしいかを丁寧に精査しておくべきだろう。

エントリーシートは発達障害者が定型者と同じ土俵に立てる数少ないチャンスだ。エントリーシートを書くのに時間制限は無いし、コミュニケーション力は必要無い。じっくりと時間をかけて内容を推敲し、慌てず丁寧に自分を表現すればいい。分析や文章作成、編集などの能力は発達障害者の方がむしろ得意とされる分野なので、ここで存分に力を発揮して余裕を持ちたいところだ。

コミュニケーション能力に苦しむ発達障害者にとっては、想像するのも苦痛であろう関門が面接試験だ。友人との会話もままならない状態で、トーク力抜群のリア充や重箱の隅をつつくような面接官たちと渡り合っていくのは控えめに言っても地獄だ。発達障害者における就職活動の成功は、面接試験が大きな鍵を握っているといえるだろう。

かなり厚く大きな壁とはいっても、面接試験は日常生活とは違って対策が可能だ。普段の会話で上手く返しができなかったり、的外れな言葉を繰り出して場を凍り付かせてしまうようなコミュ障でも、訓練によって大事故を防ぐことはそう難しくない。

「面接は覚えてきたセリフを発表する場ではない」という声もよく聞かれるが、それはあくまで面接官側の意見であって、自然な会話の中から個人のパーソナリティを見出したいという企業の思惑だ。これは定型者にあてはめて成り立つ話であって、発達障害者がその場その場で考えて発言をするのはギャンブル性が高いだろう。

丸暗記してきた自己PRと志望理由を会話の脈絡完全無視でただ棒読みするだけというのは論外だが、一般人より記憶力に優れているといわれる発達障害者がその能力を武器にするのもあながち間違ってはいない。事実、自分なりに問答を想定し、即座に反応できるようなシュミレーションを反復して頭に記憶しておくだけでも面接に臨むときの気持ちの余裕は計り知れないものがあるのだ。

最後に、運よく無事に就職活動を終えた発達障害者に伝えておきたいことがある。それは、決して内定して終わりではないということだ。「内定からがスタートライン」といった言葉はよく聞くだろうが、まさにこの通りで、特に発達障害者は肝に銘じておいてほしい。入社後に運よく能力を発揮できる部署に配属されることもあれば、全く逆のケースになってしまう場合もある。

いずれの場合も、自分は発達障害者であるということを意識しているか否かで仕事への取り組み方やケア方法などで大きな違いが生じてくるはずだ。あくまで他人のやり方は参考程度に、自分の最も適切な方法・手段を模索する必要があり、そういった自分を疲弊しないように守る工夫が社会人生活において重要になってくるだろう。